ラスト・レター

5/8
前へ
/8ページ
次へ
「クリスマスのお返しが楽しみだなぁ」 「何だよ。それが狙いか」 「……ね、どこ連れてってくれる?」  クリスマスなんて半年も先のこと、考えてねーよ。  でも半年後、一年後も、俺の隣には華がいるんだろうなと、ぼんやりと想像した。 「じゃ、ホテルかな」  俺がそう言って笑うと、華は思い切りしかめっ面をしてみせた。 「いや、ホテルっつっても、すげー高いところだし。プレゼントも手紙付きだから」 「あ、手紙いいね」  華は分かりやすく、喜怒哀楽を率直に表現する。  鼻先にある無邪気な笑顔。  俺の好きな、愛嬌のある華の笑顔。  俺はゆっくりと唇を合わせた。  こうするといつも、彼女は少しだけ身を固くする。それが堪らなく可愛くて、愛しい。  生ぬるい湿った風と、夏の匂い。  窓の外ではうるさいくらいに蝉が鳴いている。  手を添えると華の襟足は汗ばんでいて、それさえも愛しく感じた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加