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ベッドの奥に位置している窓に、華は身をよじってうんと手を伸ばす。そしてその小さな手で、カラカラと窓を開けた。
柔らかそうなお腹が、Tシャツの裾から覗いた。
彼女は俺と付き合う前ずっと前から、ダイエットを続けている。今のままで充分可愛いのに。
夏の匂いをいっぱいに含んだ風が、華の茶色い髪をサラサラとなびかせた。
「見て」
華はもう一度そう言って、小さな箱を膝の上で開ける。
俺は華の隣に、ゆっくりと腰を下ろした。まだ乾かしていない髪から、滴がぽたりと肩に落ちる。
箱の中から出てきたのは、濃いピンク色のスープマグ。
取っ手がハート型になっていて、いかにも女が好みそうなデザインだった。
「ああ、シール集まったんだ」
そのスープマグはコンビニエンスストアの商品に付いているシールを30枚集めると貰える、華が欲しいと騒いでいたものだった。
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