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FIRST Day【Ⅰ】
「殺す…」
「へ?」
「殺す!!」
俺のよく知る女性の声が聞こえる。酷く恨みと狂気が入り混じった声だ。
「ハンナ?なのか?」
「ふふ、よくわかったわねヴェクター、でも、さよならか」
「ちょ、ちょっと待てって!!」
思わず両手の平を彼女にむける感じで後ずさりしていた。
ハンナとは共通の友人の知り合いで、その友人の紹介で食事をすることになり、次第に中を深めていった。綺麗で整った顔立ちに耳元で収まっている短髪は、綺麗な栗色だった。正直、ハンナの容姿に一目惚れだった所もあった。後日友人から聞いた話だがハンナは前に付き合った彼氏を事故で亡くして、すごく落ち込んでいたと。その時、彼女を必ず幸せにすると決意したのを覚えている。ただのサラリーマンの俺の人生に花を添えてくれた彼女にとても感謝している。
「お、おい、ハンナ、待てって!何持ってんだよ!」
「…殺す」
彼女の目はいつもの優しい眼差しではなく、色褪せどこか虚ろな感じだ。
「逃がさない。」
「は?」
彼女が持っているものが姿を現した。それはどこからか差し込む光を浴び光沢している。
「お、おい、冗談はよせって!包丁なんて、な、何に使うんだよ!?」
「殺す、逃がさない。」
そう言って走り出した彼女に直ぐに背中を向け全力で駆け出した。
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