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颯斗の嫉妬という醜い心を引き出す男、大原貴文、苛々するのについ目で追ってしまう。
やっぱ女に囲まれてるよな、チャラチャラしやがって。
「迫田先輩」
1年女子が颯斗の名前を呼んだ。
「あっ、え、何?」
そもそも女子部員に慣れていないものだから、ドギマギしてしまう。
「唐揚げの皿回してください」
「ああ…」
颯斗が回した唐揚げの皿は、1年女子の手から貴文の前に差し出された。
「はい、大原君、唐揚げ」
「ありがとう」
貴文は女子に微笑む。
げっ!何だよそれ!
貴文が入部して以降この調子。
高校生クイズの優勝者をアゴで使う計画は、一度も実行されていない。
むしろ俺が使われてるじゃん。
場もすすみ、皆がそれぞれ席の移動を始めた頃、女子に囲まれた場所から貴文が颯斗の隣に移動して来た。
「迫田先輩とゆっくり話したいって思ってたんです。でも中々チャンス無くて」
「おまえがいつも女子に囲まれてるからだろ」
「まあ、そうなんですけど」
「否定しろよ!そこは!」
「あはは、今日こそゆっくり話しましょ」
「俺は話すことなんてねーよ」
「えー?でもいつも俺の事見てくれてるじゃないですか。2年も前の優勝も覚えてくれてたし」
「はあっ?それは俺も本選ギリまでいったからな、しかも毎年。悔しくて覚えてたんだよ」
「毎年予選落ち?うーん、先輩達、知識は充分にあると思うんだけどなぁ。だいたいこの大学に現役で受かってるんだから」
「ま、まあな」
そうだそうだ、俺は現役合格。浪人組のお前に偉そうにしていいところだよな。
「ま、俺は大抵の志望校はA判定で余裕で…」
「でもクイズは知識だけじゃ駄目なんですよね。早押しに反応する瞬発力と度胸は知識を超えますから」
颯斗は ここぞとばかりに現役合格自慢をしようとしたところで、貴文の言葉がかぶさる。
「は…はあ…」
「我がサークルは、早押し対抗の訓練に真剣に取り組みましょう。とりあえず目標はパネルクイズ本選出場って事で」
「パネルクイズかぁ。お前、まさかあれも出たの?」
「はい、あります、浪人中に。優勝しました」
「もう、何だよお前、凄すぎるよ」
現役合格自慢なんてあっさり吹き飛ぶ。
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