第1章

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颯斗の嫉妬という醜い心を引き出す男、大原貴文、苛々するのについ目で追ってしまう。 やっぱ女に囲まれてるよな、チャラチャラしやがって。 「迫田先輩」 1年女子が颯斗の名前を呼んだ。 「あっ、え、何?」 そもそも女子部員に慣れていないものだから、ドギマギしてしまう。 「唐揚げの皿回してください」 「ああ…」 颯斗が回した唐揚げの皿は、1年女子の手から貴文の前に差し出された。 「はい、大原君、唐揚げ」 「ありがとう」 貴文は女子に微笑む。 げっ!何だよそれ! 貴文が入部して以降この調子。 高校生クイズの優勝者をアゴで使う計画は、一度も実行されていない。 むしろ俺が使われてるじゃん。 場もすすみ、皆がそれぞれ席の移動を始めた頃、女子に囲まれた場所から貴文が颯斗の隣に移動して来た。 「迫田先輩とゆっくり話したいって思ってたんです。でも中々チャンス無くて」 「おまえがいつも女子に囲まれてるからだろ」 「まあ、そうなんですけど」 「否定しろよ!そこは!」 「あはは、今日こそゆっくり話しましょ」 「俺は話すことなんてねーよ」 「えー?でもいつも俺の事見てくれてるじゃないですか。2年も前の優勝も覚えてくれてたし」 「はあっ?それは俺も本選ギリまでいったからな、しかも毎年。悔しくて覚えてたんだよ」 「毎年予選落ち?うーん、先輩達、知識は充分にあると思うんだけどなぁ。だいたいこの大学に現役で受かってるんだから」 「ま、まあな」 そうだそうだ、俺は現役合格。浪人組のお前に偉そうにしていいところだよな。 「ま、俺は大抵の志望校はA判定で余裕で…」 「でもクイズは知識だけじゃ駄目なんですよね。早押しに反応する瞬発力と度胸は知識を超えますから」 颯斗は ここぞとばかりに現役合格自慢をしようとしたところで、貴文の言葉がかぶさる。 「は…はあ…」 「我がサークルは、早押し対抗の訓練に真剣に取り組みましょう。とりあえず目標はパネルクイズ本選出場って事で」 「パネルクイズかぁ。お前、まさかあれも出たの?」 「はい、あります、浪人中に。優勝しました」 「もう、何だよお前、凄すぎるよ」 現役合格自慢なんてあっさり吹き飛ぶ。
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