第1章

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貴文はサークル内でいつのまにか指導側になっていた。 その問題なら答えはそれしかない、知識を集め選択が一つに絞られた瞬間に素早くボタンを押す。確かに度胸も必要。 貴文は繰り返しそこをサークルメンバーに伝えた。 すると、はじめは貴文目当てで入部した女子部員達も、クイズの面白さ、奥深さに気づいたのか真剣に取り組み始める。 サークルに活気が出てきた。 「お前のおかげだよな」 サークル活動後はいつの間にか、颯斗は貴文と一緒に帰るようになっていた。 「何がですか?」 「みんな真剣になりだしてさ。ほら女子部員達も」 「元は真面目な子たちだから、きっかけがあればね」 「確かに。お前がそのきっかけを作ってるんだよな。やっぱ凄いな。その顔だけでも反則なのに、神様はずるい」 「顔が反則ってなんすか、それ」 貴文が笑いながら聞く。 「イケメンって事だよ」 「いや、俺より先輩の方が女子受けする顔じゃないですか。いわゆる可愛い系の」 「はあ?」 「先輩眼鏡やめてコンタクトにしましょうよ」 「あのなぁ、少女漫画じゃないんだから眼鏡外したら別人とかあり得ないだろ。だいたい俺自身は毎日眼鏡外した自分の顔、鏡で見てるけど、我ながら残念としか思えねえよ」 「うん、見た目ってもちろん眼鏡だけじゃなくて、髪型とか服の選択とかも影響しますよ。散髪はどこで?」 「え、その辺の1000円カットで」 「それもいいけど、たまには美容室行きましょ。先輩バイトしてるって言ってましたよね?」 「うん週3塾講師」 「じゃ、次のバイト代一回だけお洒落に金使いましょ。俺、付き合いますよ」 「何勝手な事言って…。俺は中身で勝負するタイプだ」 「でも例えば会社でも、同じ能力なら身だしなみキチンとしてる方を採用しませんか?中身を知ってもらう前に拒否されるのはもったいない」 「ま、まあ確かに…」 「世の中、何となく見た目に努力する人を下に見る傾向があるけど、可愛く見せるのも、かっこよく見せるのも、立派な努力の一つだと思います。もちろん、中身の努力も必要ですけど」 何だよ、お前言うことまでカッコいいのかよ。 「ね、今度のバイト代入るのいつですか?買い物も一緒に行きましょう」 貴文はクイズ界にプリンス降臨と司会者に言わしめた、その極上の笑顔を見せる。 ほんとに何だよ、こいつ…。颯斗は胸がキュッとなった事に自分で気付かないふりをした。
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