一章 

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 鳥の(さえず)りが聴こえた。  目を開ける。光。上空の日差しが眩しい。  自然と息を吸っていた。呼吸をしている。  指先を動かす。動く。動け。動いた。肘を曲げて胸に手を当てる。体温の熱。同時に薄い胸板から手のひらに伝わる脈動。生きている証だった。  身体を起こそうとしたが痛みが走った。  その感覚が尚更に生を実感させるには充分だった。  背中越しに冷たい感覚が広がる。  仰向けに倒れているのは緑の芝や土の地面ではなく固く削りだされた岩肌の上に身体を預けていた。  意識が覚醒していく。  視界も感覚も正常に戻ってきた。そして鼻腔を突く血の臭気に気付く。  周囲には血だまりが出来ていた。  あまりの光景に押し寄せる嫌悪感に支配されそうだった。赤黒い鉄の臭いが立つ液体の中に無骨な塊が浮かんでいた。  それは恐らく動物の腕や足の肉片だった。  得体の知れない感情を覚えながら視線を動かす。目があった。血の海に沈む頭部には首から下が消失していた。暗く濁った双眸の直ぐ下には豚のような鼻が見えている。  今までに感じた事の無い不快感が込み上げてくる。喉元にまでせり上がる感覚を必死に押さえ込む。  
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