一章 

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 握られていた長槍の刃と柄を慣れた手付きで畳んでいき、こちらに歩み寄る表情には相変わらず、ぎこちのない笑顔が浮かんだままだった。そんな男の名前はガイン・メルフレメと名乗った。さらに亜人と称される謎の化け物──  ──大鬼(パルク)豚鬼(オーグ)。  聞いた事のない謎の生物の群れをたった一人で一掃したと、にわかに信じがたい真実を告げた。  その後、俺の身体の怪我をこの野晒しの場所でまともな治療器具無しに蘇生治療を施したのもガインだと言う。  ──輝石(きせき)。それは男が持つ長槍に嵌められた宝石にしか思えない宝珠のおかげだと薄く笑って事の次第を説明された。  後は必然的な会話の流れとして、なぜ君は血だらけで倒れていたのか。亜人達の領域に丸腰で踏み入れたのは追い剥ぎにでも逢ったのか? やれ無知無能の世間知らず。もしくは自殺志願者だけだと半ばほとんど推測の範囲に収まる指摘と叱責を受けることになるが状況的に考えて、俺自身が現状に対して不明瞭な点が多すぎる事が多く、大半は言葉を濁しての受け答えとなった。  そんな俺の反応にガインが最終的に選んだ結論は「君の事情は知らないけれど一度拾った命は大事に。それでも不要なら後日に予定変更!」といった具合に半ば勝手に話は進んでいき、俺は渋々ながら上下に頭を振った。
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