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何十回、何百回、何千回。何万と見た景色。空。
思えばいつ間違えたのだろうか。
そもそも、過去の過ちに正誤の答えは存在したのだろうか。
それすらもはや曖昧だった。
目に映る景色は青と白と灰の世界だ。
やがて視界の端から滲む赤と身体に伝わる熱。
痛みを通り越した遠くなる意識。
眠気がゆっくりと近いてくる。
朧気な視界が真っ赤に染まっていく。
視線を自らの腹部に向けると赤黒く折れた樹木の枝が腕のように突き抜けていた。体は動かない。壊れた人形みたいだ。投げ出した腕は関節の限界を超えて新たに第三関節を生み出していた。
気付けば、口の端が釣り上がっていた。
自嘲の成分が含んだ自身お似合いの姿に笑っていた。
誰かからみれば、大いに恵まれている環境なのだろう。だが俺には耐え切れなかった。
あの日、全てを失った。
親しき人が仕方が無いと、言葉を述べた。
俺は軽蔑されたかった。自らの過ちを、誤りから逃避したかった。
あの日の選択を俺は選べなかった。できなかった。
投身の成れの果て。瀕死の姿。
青と白と灰に赤の景色だ。これでもう──
何も悩まなくて済む。
もう何も、考えなくて済む。
あれ? カンガエルトハナンダッケ。
薄ぼんやりと視界はまどろみに包まれ閉じていく。閉じてくれ。閉じた。
最後は塗りつぶした黒。闇だった。
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