序章

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 重なり合う怒号が空間に注がれていく。  戦闘長槍の切っ先に雷撃や焔が宿る。  爆発と紫電が室内を穿ち、蹂躙していく度に朱や琥珀の宝珠達が光り輝き役目を終えて散っていく。  革製軍靴が輝きを失った宝珠を躊躇なく踏み砕く。  壁は幾度なく穿たれ、棚に配置された本や紙の束を爆砕していく。   銀の騎士たちの怒号はやまない。止まらない。  掲げられた長槍の切っ先が法衣を纏う姿の枯れ枝の腕を貫き壁に縫い止めた。  赤黒い血の染みが広がり、纏う雪色の法衣が緋色に染められていく。  片腕の自由を奪われ、法衣を纏う者が力無く崩れ堕ちるのを銀の騎士達が許さない。   縫い止められていない腕が焔を放つ長槍の刺突を浴びて両腕の自由を奪う。  痛みの呻きも苦鳴も上げずに赤黒い斑の染みだけを増やしても法衣の姿は沈黙を破らなかった。  押し黙る表情は顔半分を覆う布によって隠されていた。  両腕を壁に打ち付けられ赤黒い十字架となった姿をその場にいた全ての者がその目に宿した。  熱量収まらぬ部屋の熱気は異様な空気を帯びていた。
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