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黒。黒。黒。闇。
目の前の景色も振り返った先も暗闇の世界。
誰か居ないか叫びたいが声が出ない。
どこまでも続く暗闇の世界だった。辺りを見渡しても暗幕に閉ざされたような光景がどこまでも続いている。
突然、背をなぞるような違和感を覚えた。背後に視線を感じる。
振り返ると一人の少年が膝を抱えて座っていた。
声を掛けたいが相変わらず声は出ない。
少年の顔は伏せられていて、まるで俺を見る様子はなかった。
互いに対峙したまま少年が言葉を発した。変声期を終えていない高い声だった。
「僕は夢がたくさんあるんだ」
それは俺自身に問いかける言葉ではなかった。
自身に向けた独白のような語法に俺はただ耳を傾けている。
「何で君はなりたい僕になれなかったの?」
伏せられていた顔が面を上げる。真っ直ぐに見据える黒の瞳。内心の驚きに目を逸らそうとしたが、そうさせない力が働いていた。
少年は過去の俺自身だった。
「ねぇ。どうして?」
俺が俺に答えを求めていた。
思い浮かぶ答えを吐き出そうとしたが言葉に出せない。まるで言葉を忘れたように。
「ねぇ。どうして?」
幼少時代の俺が重ねて問い続けるのを止めない。
「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?」「ねぇ。どうして?」
繰り返される質問に俺は声にならない叫びをあげていた。恐怖を感じていた。
耳を塞ぎ止まない俺自身の声を拒絶する。
無我夢中で走り出していた。背後にいる俺を置き去りにして。当てもなく、ただひたすら。
「そうやって、逃げたんだね」
走る俺自身に幼少時代の俺が最後に言葉を投げ捨てた。
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