月を仰ぐ

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――楊君だよ。わたしは今夜、楊君を想っていたの。  心を抱きしめ、締め付ける楊の声に、思わず口にしそうになった言葉を美夕は呑み込み、首を振った。  美夕の胸の奥深くに、楊の溜息が流れ込んだ。 胸中を締め付ける痛みが美夕を苦しめる。  自分の想いのベクトルは幼い頃から同じ方向を向いていた。 そのことに、気付かなかった。 気付かないまま、こんなことにズルズルと嵌ってきた。  普通に想い合える関係であればよかったのに! 「今夜はお仕置だね」
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