第二話 奇病

11/13
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
 奇病に侵されることもなく、その病を払った巫女……御池 真理亜。彼女には神聖な何かが宿り、それを崇めることでこの輪廻村は守られる。  この村の人間は、完全にその信仰に捕らわれ、侵されている。余所者の私からすれば異常な光景だが、それがこの村においての常識。  そして、その異常な常識が私自身をも侵し、狂わせていくのだ。  午前六時には診療所に私はいた。こんな早朝からこの場所に来たのには、確かな理由があった。それは、誰にも知られずに内密に行うべきことがあったからだ。  過去、この村に蔓延したという奇病。前任の御池先生が残したこの診療所には確実に何かが手掛かりが残されているはずなのだ。    だが……。 「御池先生の文献どころか、その奇病に侵された患者たちのカルテ一枚見つからないなんて……」  私は小一時間程そう広くない診療所内を探し回ったが、その奇病に関する資料などひとかけらも見つからなかった。  誰かが廃棄した? 廃棄しないと都合の悪いことがあった? 誰にとって?   いや、そもそも……最初から、そんなものはこの診療所には存在しなかった?  様々な憶測が私の頭を飛び交う。  しかし、これだけ情報が少なければ判断のしようがない。これでは、奇病の存在を肯定も否定もできない。 「……実際に起きた出来事なら、何か……何か残っているはず」     
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!