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このままでは、私はこの村を信用できない。何か、何か一つでも良い、情報を得るため、私は再び診療所を捜索し始めた。
それから夫が診療所に到着するまで私は診療所を隈なく捜したが、奇病に関する資料や情報の類は発見できなかった。
診療所も開かなくてはならない時間となり、私たち夫婦は険悪な空気のまま初めての診察を開始した。
「おお、あんたが噂の女医さんか! 噂通りの美人やの!」
訪ねてくる村人の殆どがこのような反応だった。余所者の、しかも女医と言うのが物珍しいのか、患者ですらない村人まで診療所に押しかけ、診療所と言うよりこれでは見世物小屋だ。
「もう、受診以外の立ち入りは控えてくださいね。見世物じゃないんですから」
「みんな先生の事心待ちにしとったんや、今日くらいは大目に見てくだせぇ」
そう言われると私も悪い気はせず、つい村人たちとの会話も弾む。
「文也! お前、東京出て行った時は心配したが、ええ嫁さんもらって帰って来たなぁ!」
「え、ええ……お蔭様で」
夫は昨日の事を引きずっているのか、村人たちの会話にも積極的には参加しようとはしなかった。
今の夫には、私の姿など映っておらず、どこか違う場所へ視線が向いている気がして、私の不安はぬぐい切れなかった。
「せや、今夜は公民館で歓迎会や! 新しい村の仲間やからな!」
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