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村人と私の間に、凛とした声で横やりを入れてきたのは……あの美しい少女、真理亜だった。
「ま、真理亜様……ッ」
村人たちは真理亜の存在に認識すると同時に頭を深々と下げる。
しかし、肝心の真理亜は村人たちに目もくれず、その視線は私に注がれていた。
「こんばんは、秋乃様。催しは楽しんでいただけているでしょうか? 村人たちは随分と楽しんでいるようですが……」
「もちろんです、真理亜様……それより……」
しかし、私の意識はそんなことに向いてはいなかった。何故なら、目の前にいる深紅の着物に身を包んだ真理亜は、車椅子に乗り、その背後には社務所の男が控えていたからである。
「ああ、お気になさらないで。生まれつき足が少し不自由でして、外に出るときはいつもこうなんです。だから普段はあまり表には出られないのだけど、今日は特別な日ですもの」
真理亜は気にする様子もなく、笑ってみせる。
「そうですか、すいません。立ち入ったことを聞いてしまって」
「それより、お隣よろしいでしょうか。私も秋乃様とお話がしたいのです」
そう言って真理亜は車椅子からゆっくりと立ち上がり、私の隣へ座した。
真理亜の足は不自由ではあったが、完全に動かせないわけではないようで、長年の訓練で多少の歩行や正座などは可能なようだった。
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