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私の目から見ても、手足の一部麻痺のような症状はあるものの、そこまで重い障害では無いように思えた。
「そうですか、奇病の事を調べていらしたのですね」
そして、隣に座った秋乃と会話を交わすにつれ、自然に話題はこの村で発生した奇病のものへと向かっていった。
「はい……けれど、診療所では御池先生の文献どころか、患者のカルテ一枚すら見つからなくて……真理亜様、神社の方にそう言った類のものは保存されていないのでしょうか」
「聞いたことがありませんね。祖父は仕事の事は一切口外しない厳格な方でしたから……まぁ、探せば見つからないことも無いかもしれませんが……」
「是非、お力をお借りできないでしょうか……」
私は真理亜に対し、頭を下げて願う。
残されているとすれば、御池家。そして、その真相を知るとすれば村の最高権力者である真理亜。彼女の協力を得られれば、真相解明に大きく近づくことができるはずだった。
「いいえ……」
しかし、真理亜から発せられた言葉は私の予測に反したものだった。
「秋乃様、はっきり申し上げますね。もうこれ以上、奇病の事を調べ回るのは遠慮して頂けませんか?」
「それは、何故でしょうか……」
常に笑顔を絶やさなかった表情が一瞬だけ、歪んだ気がした。
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