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こんな独特な薬品はこれまでの医師経験でも経験したことが無かった。私は割れた瓶をもう一度ゴミ袋から取り出し、そこに記された薬品名を目の当たりにする。
「これって……」
その薬品は、通常の医療機関ではまず使われることのない代物だった。何故ならそれは……扱いには細心の注意が必要な『劇薬指定の薬品』だったからだ。
「何これ……この村は一体……何なの……」
「おや? こんな夜中にまでお仕事ですか? 精が出ますね秋乃先生」
薬瓶に釘付けになっていた私は、背後に立っていた村人の存在に気が付く事が出来なかった。
声を掛けられ、後ろを向いた時には既に十名程の男たちが部屋の入口に立ちふさがっていた。
「何の御用ですか……今日の診察は終わりです。また明日になってから……」
私の言葉を無視して、先頭の男が部屋に入り込んでくる。
「きゃあっ! やめて、離してください!」
そして、それに続いて後続の男たちも部屋に押し入り、更に私の身体の自由を奪っていく。
「冷たいこと言わずに、俺たちの相手してくださいよ? 知っているんですよ? さっき、儀式の覗き見していたでしょ。秋乃先生だけ除け者っていうのも可哀想ですし、わざわざ気を遣ってここまで来たんですから」
男の一人が下衆な笑みを浮かべる。あの時、既に私の存在は認知されていたのだ。
「じゃ、始めますかね」
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