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第三話 悲劇
その夜、診療所を閉めた後に公民館で私たち夫婦の歓迎会が開かれた。
大規模なものでは無かったが、村人の多くが参加し、大いに盛り上がった。
「へぇ、その若さで外科医ですか……しかもこんな美人が」
「いやぁ、この村には若い女がほとんどいませんしね。それに、以前の奇病の件から出生率も激減しましたし、お二人には子づくりにも励んでもらわんと!」
「この村で子を成せるのは真理亜様だけだと思っていたが、秋乃さんにも頑張ってもらいたいねぇ」
会話の内容はほとんど出生やら妊娠やらばかりだった。この十年、子供も真理亜様が産んだ五名以外にこの村で出生は無い。だからこそ、真理亜様に次いで子供を産む能力を持つ私にそのような話を持ち込んでくるのだ。
「はは……まぁ、子供は多ければ賑やかになりますし、頑張ってみます……」
村人たちに迫られ、私は苦笑いを浮かべながらそう答えるしかなかった。
「いつかは、秋乃さんも『儀式』に……」
「……もう、皆様お行儀が悪いわ。秋乃様とお話ししたいのは分かりますが、あまり迫っては秋乃様もお困りになってしまうでしょう」
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