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第四話 真実
「一体……何があったんだ」
翌朝、私の姿を見て夫は愕然とした。身体中は傷だらけで、至るとことに暴行の痕を残した妻の姿を目の当たりにすれば無理もない。
「昨日、公民館から帰る途中に……足を滑らせたの。すぐに診療所に向かって、応急処置はしたけれど……けれど」
「……っ!」
お腹を何度も摩る私の姿に、夫はようやく察したようだ。
お腹の子供が、死んだ……いや、殺された。
目を覚ました時には床一面が血の海だった。そして、その血は私の腹の中から溢れ出ていることに気付き、絶望した。
診療所の設備で安否を確認したが、お腹の子は子宮の中で原型が無いくらいに潰されていた。
「……その、残念……だったね」
夫の言葉は、ただそれだけだった。悲しそうな表情だけ浮かべて、内心では何とも思っていないことが、私には分かった。
「それだけ? あなたにとって、お腹の子はその程度の存在だったの?!」
夫は目を逸らすだけで答えてくれない。
機能の神社の本殿で、真理亜を抱く夫の姿が思い浮かぶ。
そして、私は察する。夫にとって子が流産したことなど大した問題では無い。
だって、夫には別の相手が……真理亜が、夫の子を産んでくれるんだもの。
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