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第五話 復讐
それからまず真理亜への忠誠の証として行われたのは『手術』だった。
患者は私で、執刀医は夫である文也。難しい手術では無かったが、私にとっては耐えがたい苦痛を心に伴う手術だった。
「真理亜様……手術は無事に完了しました」
診療所の手術室の前で待っていた真理亜に、文也が頭を深々と下げる。
「お疲れ様です。心が痛みますわ、こんな惨い手術を夫であるあなたにお願いするなんて」
「いえ……この村の医師は私と妻だけですから」
そのもう一人の医師である私は、手術台の上に横たわっていた。
開いた手術室の扉から、真理亜と目が合う。真理亜は笑っていた。
「外圧の衝撃で子宮が大きく損傷していまして、秋乃の今後を考えて……最終的には『子宮全摘出』という決断に至りました」
夫の手によって子宮を切除する、それが今回行われた手術。
これにより、再びこの村で子を成す事が出来る女性は御池 真理亜たった一人となった。
彼女を脅かす存在は、もういない。
「そう……残念ですわ秋乃様。あなたと文也様のお子様だもの、さぞかし可愛らしいお子様だっただろうに……もう、それが見られないなんて」
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