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chapter.4
「おーいっ!いつまで寝てるんだー?」
矢代は、2階に向かって声を掛けた。
時間は7時半を過ぎている。
いつもだったら、悠斗は朝食を食べている時間なのに、起きて来る気配がまるで無い。
「おーい」
反応は無く、代わりにキッチンカウンターの上で、矢代のスマートフォンがブーッと震えた。
ラインが来ている。
2階の悠斗からだった。
『創立記念日で今日は休み』
そう言えば。
創立記念日恒例の紅白まんじゅうの箱が、冷蔵庫に入っていたのを、今思い出した。
『了解。これから仕事だから、出かけるなら戸締りよろしく』
『いってらっしゃーい』
手を振る、何かのアニメキャラスタンプが送られて来た。
矢代は今日、雑誌の取材で久々に都心に出る。
朝食後の隙間時間でプロットを進めた。
数回の打ち合わせで、ほぼ『小説みたいな恋』の続編の案は固まりつつある。
いい感じに筆がのって来たが、そろそろ出かける支度をしなければ。
スウェットの部屋着を脱ぎ、Tシャツとチノパンに着替えてジャケットを羽織った。
今日は雑誌のインタビューの仕事だが、女性誌からの取材はめずらしい。
雑誌が募集した「読者が選ぶ恋愛小説」に、矢代の作品が選ばれ、そのコメントが欲しいという。選ばれたのはもちろん最新作『小説みたいな恋』だ。
恋愛小説を書くと、今まで縁が無かったこんな仕事も舞い込むのか、と驚いてしまう。
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