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chapter.1
開店前の大型書店。
今日は、雑誌やコミックス新刊の発売日がいくつも重なり、店員達はそれら全てを店頭に陳列するのに忙しい。
その中でも特に、文芸書コーナーは売り場作りに熱が入っていた。
今日は超人気小説家の、話題の新刊が発売される。
ずっと推理物を専門に書いてきた作家の、初めての恋愛小説。
マスコミでも紹介され、書店には予約が殺到し、出版社もかなり強気になっている。
この書店の店頭に並べられる部数も、半端ではない。
台車に山と積まれた新刊を、いかに目を引くように並べるかは、店員の腕の見せどころだ。
ベテラン店員は、店内で一番目立つ平台のセンターを大きく取り、本をいくつも並べて平積みした。
出版社から送られて来たポスターはもちろん、パソコンで作成したオリジナルのポップを飾り、さらに目を引く工夫をする。
“ 話題沸騰! 矢代航太、初の恋愛小説!最新刊『小説みたいな恋』”
10時。開店時間を知らせるチャイムが、店内各フロアに響く。
自動ドアが開き、続々と入って来る客達の多くは新刊の平台に直行し、矢代航太の新刊を手に取るとレジに向かって行く。
『小説みたいな恋』の発売第1週めの売り上げ部数は週間ランキングの1位を飾り、全国の書店で品切れが続出する騒ぎとなった。
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