chapter.11

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『悠斗くんには素質があります。まず「小説みたいな恋」にゲスト出演という形で出て頂き、悠斗くんがやる気があれば、是非当社で預からせて頂きたいんですが、どうでしょうか? 』 話は、えらく具体的だった。 『小説みたいな恋』の、本城凪と同じバイト先で働く高校生男子。 その役を、悠斗に()らせたいという。 「いや、しかし。悠斗は全くのシロウトなんで、演技なんて無理だと思いますよ?」 『普段通りでいいんです。悠斗くんには出来ると、ピンと来ました。彼には度胸があります』 「......度胸、ですか」 『恐れを知らないというか。父親である矢代先生なら、おわかりではないですか?』 確かに。 つい、そう答えそうになった。 ドラマ『小説みたいな恋』で、原作者の息子をデビューさせたいというのもわかる。絶対に話題になるだろう。 矢代は、困っていた。 せっかく意見を聞こうと思っていた森谷湊からは全くアドバイスを得られず、しかも彼はすぐ傍の床に転がって眠りこけている。 午後から予定があると言っていたが今いったい何時なんだろうか。 正直、話に集中出来ない。 「あの、井口さん」 『はい』 「今、何時ですか?」 『え? 15時半、ですね』 「ヤバッ」 『は?』 「あ、実はその、ちょっと用事が。それで、えーとどうしよう、今日の話は悠斗に伝えますので、また改めてでいいですか?」 『それはもちろん。よくご相談ください。色良いお返事お待ちしています』 「はい! 失礼します!」
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