chapter.11

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森谷湊はソファー脇に置いたボディーバッグからスマートフォンを抜き取り、画面に顔を近づけた。 「あー。すっぽかしちゃった」 「すみません、俺も飲みながら寝ちゃって」 「いいですいいです。たいした用事じゃないから。ゴメンネってライン入れとけば」 そう言いながら森谷湊はちょいちょいっと画面を操作して、スマートフォンをバッグに戻してしまった。 「矢代先生んちの居心地の良さ、ヤバい。このまま夜まで居たら、迷惑ですか?」 「......それは、構わないですよ」 「ホントに?」 「元々の用事は、何だったんですか?」 「デートです」 「......」 「そういう顔」 「はい?」 「そういう顔するから、誤解するんじゃないですか、もう。あっ先生、コーヒー淹れていいですか?」 「あ、はい。どうぞ」 森谷湊はパッと立ち上がると、キッチンに向かった。 それより今、どさくさ紛れに言われた事が矢代には引っ掛かった。 そういう顔? 「えーと、豆ってどこですか?」 「あ、」 キッチンカウンターのコーヒーマシンの前で、森谷湊はキョロキョロしている。 矢代は傍に行き、カウンター下の引き出しを開けて、豆の袋を出してやった。
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