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「テレビドラマ!? うっそ、マジ!?」
息子に隠しておくのもおかしいので、矢代は夕飯を食べながら告白した。
返って来た反応は、ほぼ想定通りだ。
悠斗は大好物のカニクリームコロッケに箸を刺したまま、食べる事を忘れている。
「落ち着け。ほら、ちゃんと食えよ。旨いぞ、冷凍コロッケ」
「何チャン? 誰が出んの?」
「ニッテレ。誰が出るとかそういうのは、聞いてない。まだ決まってないんじゃないか?」
「やっべ、ドキドキして来た。でも『小説みたいな恋』かあ。内容地味じゃね?」
鋭い。
悠斗は、父親の作品をいつもきちんと読む。本なんてまるで読まない息子が、矢代航太作品は読みやすいと言ってくれるのが、実は密かに誇らしかった。
『小説みたいな恋』は、話の展開が今までの矢代作品と比べると、かなりおとなしい。
登場人物の感情表現に、重きを置いたからだ。
半年前発売したこの新作を読んだ時も、悠斗は「面白かった。けどやっぱりいつもの推理物シリーズの方がワクワクするなあ」と感想を伝えて来た。
その正直さに、矢代は絶対の信頼を寄せている。
「ねえ、原作者って撮影現場見に行ったり出来んじゃねーの? いーなあ!」
「悠、わかってるだろうが、まだ情報解禁前だからな。外で絶対喋んなよ?」
「はーい、それはわかってまーす」
息子は父親の作品のドラマ化に、興味津々で期待大らしい。
それは親として嬉しい事だが、矢代本人は実の所、ドラマ化にそれ程期待をしていなかった。
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