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第1章 1節 持つべきものは
鼻の奥に朝の冷たい空気が舞い込む。
あの夢が終わった、そのことに私は安心する。
けれどすぐに呼吸までは止まらなかった。
「はっ、はっ、はっ、はっ…!!」
嫌な汗が全身から出て寒気を覚える。
(落ち着け、落ち着け、落ち着け……!!)
ガタガタと体が震えて歯をガチガチと鳴らす。
私は持っている杖と弦楽器を力強く抱きしめて顔を抱える膝の上に沈めた。
これで目が見えればまだ安心できたかもしれない。
だが朝になっても私に光は差し込まない、
私の広がっていた世界はとうの昔に閉じたのだ。
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