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私が事件の結末を知ったのはこの年になってから。
親からはおじいは悪い人に殺されたと聞かされていた。
実際は父のボヤでおじいの家が焼けた、これは身内が起こした事件だったのだ。
犯人は偶々近くを通った郵便配達をしていた青年に裁決された。
何もしていない青年は懲役を食らったが現在はしっかりと働いている。
私は一度彼に会い、謝罪した。
幼い私は知らなかったが当時私の両親は多額の借金を抱えていた。
この事件を起こしておじいの遺産が手に入ったがそれでも全額返済には至らなかった。
だから慰謝料狙いで彼に罪を着せたのだ、尊敬すべき両親が。
彼は私を咎めることはなかった、代わりに何もかも失った彼は私にこう言った。
幼い貴方は知らなかった、ただそれだけです。
私は思い出した。
Astral Groundを見た時、いや『世界の名前』を見た瞬間に青年とおじいを浮かべた。
咎人が許され、善人が救われない。
そんな世界があっていいわけがない、罪には罰を、善には救済を、そうならなければ。
私は『葛藤』を深く抱きしめて置いていたNatureを掴んで立ち上がり机に向かった。
不思議と涙はこぼれなかった、代わりにNatureを握る手には力がこもっていた。
おじい、ゴメン。
私は本当に馬鹿だ、私一人じゃ世の中を変えられないと思っていた。
でも今は違う、私にはNatureがある。
今の世界は『Nature』なんだ、私はこの世界の「神」なんだ。
作るよ、私。
おじいが、いや私が思い描いた世界を。
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