第1章 0節 閉ざされる世界

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 幼い私は震えながら妹と姉に触り声を掛けてゆすった。  その勢いでちょうど姉が妹を離す状態で倒れた。  幼い私にとってその時の二人の表情は非常に、忘れがたいものだった。  姉は心臓を一突きされて死んだのだろう、驚きの表情のまま目を開けていた。  逆に妹は貫かれる痛みと姉の抱きかかえる力にもがき苦悶の表情を浮かべていた。  もがいている証拠に姉の服の胸のところに大きく皺が寄っていた。  幼い私はぐらりとふらついて横向きに倒れそうになった。  私はその瞬間に幼い私の首を上から掴もうとした。  倒れる幼い私の軌道上にガラスの破片が床の木と木の間に不自然に挟まっていた。  それが氷山のように上を向いて尖がっていてそこに倒れれば命はないだろう。  けれど私の手は幼い私の首をすり抜けて空を掴んだ。  幼い私が態勢を立て直したのだ、その時に例のガラスを踏んでしまうのだが。  幼い私は踏んだことで少し冷静さを取り戻し痛みに耐えながら声を出すことやめた。  そして傷ついた足を引きずりながら森の奥を目指した。  私は後についていきながら街を振り返る。  街の火は一番村の奥にある教会にまで達していた。  教会の窓から助けを求める手の中に子どもたちの姿が見える。  私は踵を返し幼い私の後を追う、これは夢、もう二度と変えることのできない夢だ。  気が付くと私は川の茂みの中に隠れていた。  目の前には月明かりに照らせる拘束された両親とこちらに背を向ける一人の鎧の男。  (やはり来たか………!!)  私はこの時を待っていた、思わず茂みから飛び出す。  そこから男のところまで駆けていきその肩を掴もうとした瞬間、  ふわりと体が浮くような感じがしてそのまま地面に叩きつけられる。  起き上がると先程の茂みの中に戻っていったのだ。  けど違う所が一つあった、幼い私がそこで震えていたのだ。  (クソッ!!またダメか!!)  何度も同じ夢を見て同じ結果を知り何もかも諦めたがこれだけは知りたかった。  両親の仇である鎧の男の正体、これだけはどうしても諦めきれなかった。  鎧の男は兜を被ってはいないが月の翳りに隠れてその顔を見ることは叶わない。  だから何度も確認しようとした、そのたびにここに戻された。  私が悔しさで地面を殴りつけている間に男の腰から剣がゆっくり引き抜かれた。
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