第1章 1節 持つべきものは

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 トイ城には20以上の貴族とトイ王家が住んでいる。  トイ王家は現在の王であるラッテルゲルが7代目の城主で、  初代城主であるハランサージ=トイからその家系は始まっている。  家族構成は王妃ミラルロッテ、第一王子ヴァーレット、第二王子ディベルド、  第三王子ハラディアル、第二王女セガトル、第三王女ファニテンとなっている。  その中で第一王女ヒーグは早逝、第四王子ロントハは暗殺された。  「おお!我が親友イリスよ!今日はお祝でも記念日でもないが俺様は――――」  そして今、目の前で私にしつこく絡んでくる男が元第五王子シュニッティックである。  とてもとても我が強くてその性格が祟って城から追い出されてしまった男だ。  その時に介抱して色々と世話を焼いたのが私なのだが、それはまた別の話。  城から追い出された王子、王女は珍しくない。  ミラルロッテがラッテルゲルと側室との子を嫌いその側室共々城から追い出し、  出来の悪い王子、王女を神聖な城を汚すのは許さないと言って追い出し、  加えて政略結婚などの決めつけを聞かない者は優秀であっても追い出すらしい。  我々市民でさえドン引きするほどの王妃は実はとても質素倹約なことで有名で、  城の人員を最小限にしハルオンや城下町の商売を指揮して国外への出費を抑え、  さらに商人と市民からの税を抑え労働者には週休2日を義務付けさせている。  要するに家族に厳しく国には優しい、王の代わりにもなれる良妻賢母なのだ。  「―――だからこそ私は母のようにこの国の金銭を回したいのだ!!」  長い長い演説がやっと終わったか。  驚いたことに周りの群衆からちらほらと拍手が聞こえてきた。  内容は一切聞いていなかったがよほど素晴らしい内容だったのだろう。  「それで?何にもない日にお前は一体何しに来たんだっけ?」  一応周りには護衛の人間もいるらしいが、生憎とこちらは目が見えない身。  ついでにシュニッティックの世話までしたのだ、多少の無礼も目を瞑ってくれる。  「聞いてなかったのか!?あれほど寛大に説明したのに!?」  すまない聞いてなかった、そう言って返すとまあいいもう一度言おうと答えた。  「プレゼントだ、それをお前にしたいのだ」  私は一瞬固まって、見えない目を丸くしてから何言ってるんだ?と聞き返した。
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