第1章 1節 持つべきものは

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 頭の中がおかしくなりそうだ、とポツリとそう呟く。  今までシュニッティックからプレゼントというストレスは貰っていたがまさか……  「すまない、やはりお前からのプレゼントなんてもらえない」  「どうしてだ?俺様のプレゼントに何か問題でもあるのか?」  「いや別に問題は無いけれども………」  問題が無さすぎるのがこれまた問題なんだよなぁ。  「ならば良し!!では受け取るがいい、見よ!犀銀のリュートだ!」  「喧嘩売ってんのか、お前?」  私は目が見えないという前提を興奮して忘れているのかワザとなのか。  どちらにしても面倒を見ていた時からタブーにしていたことを言われて、  流石の私も自分が最も嫌なことに対する怒りを抑えるほどお人好しではない。  「い、いやいや!!べべべ別に僕はわざと言ったわ、訳ではないぞ……!!」  一人称が昔のに戻ってるぞとはあえて言わない、根はまだ甘いみたいだ。  ………シュニッティックは現在のように高飛車な性格ではなかった。  母親があれでしかもシュニッティックは少し頭の回転が悪い、結果は見えている。  追い出され与えられた館はオンボロで近隣の住人からは幽霊屋敷と言われる始末。  そんな環境でまともな性格の子どもが耐えられるだろうか?  「そんなことよりお前最近馬に乗ってないだろ?」  うっ……何故それを………とたじろぐシュニッティック。  「昔から言ってんだろ?止まっている時は鐙から音を立てるなって」  私は馬に乗った経験がない素人だが、  周りにそんな素人しかシュニッティックに物事を教えられる人間が居なかったのだ。  例えメイドが居ても王子と言うだけで委縮し、避ける。  恐らくあの母親は強く生きろと  出来の悪い王子、王女らをわざと城から追い出したのではないかと考えられる。  出来が悪いから英才教育よりもただ知って学ぶ楽しさを教えたかったのではないか。  そう思えば多少マシに思えるがそこには絶対に運が絡んでくるのも事実。  「止まった馬の上でピシッとできない奴が崖の住人を救える王様になれるか?」  だから教えたのは単純なこと、とてもシンプルな『自信を持つ』という行為。  俺様と言えば強く見える、強気でいれば強く見える、背筋を伸ばせば強く見える、  本当にそれだけ、それだけでハラディアルと同様の地位を確立したのだ。
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