第0章 2節 次に歴史を築こう

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第0章 2節 次に歴史を築こう

 世界の名前を書いた瞬間、後ろからハンマーで殴られたような衝撃が走った。  そこから端的に痛いと言えないのがもどかしいほどの、  神経をつまむいや啄むと言った方が良い、そんな鋭利で最小の痛み。  それを十、二十いやもっと多くの神経が乱雑に潰れる感覚に襲われる。  「があっ!!」  しかしその痛みがすぐに治まった。  私はあまりにも驚きすぎて傍から見ると、  ジャーキングを起こしたようなリアクションをしたように見える。  周りの目がこちらを一瞥して再び視線を戻したのが視界に映る。  私は顔が火照るのを感じて他と同様に本に視線を戻す。  するとどうであろう、『世界の名前』の下に、  新しく『世界の歴史』という新しい項目が加わっていた。  試しに別のページを開くと本の半分のページの上部に  『世界の歴史』という文字が書かれており、残りは先程同様白紙のままだった。  私は違和感を感じた、この本は一体何なのだろうか?  もう一度本の詳細を確かめに行こうと本の端を持ち上げようとしたが、  (本が重い…!?)  というよりもピクリとも動かないのだ、根でも生えているかのように。  一度本を閉じてから横に押したり手前に引いたり、  上に引っ張ってみたり逆に上から押してみたりしたが、どれも意味をなさなかった。  再び本を開くと変わらず『世界の名前』と『世界の歴史』があった。  (………もしかしていわく付きの本だった?)  私は後悔と苛立ちで思わず舌打ちをする。  何故一時の昂りでこんな本を持ってきてしまったか、どうして書いてしまったのか。  ハァ…とため息をついて先程のペンを持ってひっくり返す。  例の消えるボールペンというやつだ。  (やめだ、やめだ。くだらない、こんなことをしている暇なんてないんだ)  別に飽きたとかそういうわけではない、ただ気に入らなかった、それだけだ。  そして『世界の名前』に書いた文字を見て唖然とする。  確かに消えるボールペンで書いたはずのその文字が羽ペンで書いたように滲んでいる。  いや、まさか、そんなはずはと思いつつ消しゴムの部分を当てて擦る。  結果は判りきっていた、消えないのだ。  他の紙に書いた文字はちゃんと消えたのに何故か本の文字は消えなかった。  
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