第0章 2節 次に歴史を築こう

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 気が付くと片手に黒電話の受話器を持ちながらつったていた。  けれど周りの様子は明らかに違っていた。  まずは黒電話の置いてある机、  これが図書館のすべすべした机ではなく木をただ机にしたものになっている。  しかも粗削りなのかそれとも年季が経っているのか所々にささくれがある。  それに椅子も同じように頑張って自作しましたと言わんばかりの仕上がり具合。  悪意があるように見えてしまうのは仕方ないことのように思える。  次に周りの様子なのだがこちらはすごい変わりようだった。  本棚がエトワール広場のように放射状に配置されており、  明らかに先程までいた田舎の図書館のスペースを凌駕していた。  しかも本棚のどれもがビルの2階ぐらいの高さで、  本棚の至る場所に高い所の本をとるためのスライド式の階段が設置されていた。  また今いる場所は、見上げると二階、三階、  そして光が差し込んでいるガラスの天井が確認できる、吹き抜けの場所だ。  残念ながら私がいた図書館は吹き抜けを作るほどの(資金面での)余裕はない。  そして窓と人が入れるような場所も見える範囲では確認できなかった。  私は一度深呼吸をして例の椅子に座ってどうしてこうなったかを整理する。  まずあの図書館にあったAstral Groundを見つけて『世界の名前』を書いた。  まあこれが原因だろう、それ以外に考えられない。  次に『世界の名前』を書いたことで周りの状態に変化があった。  正面を見る形に座り直して机の上を見る。  その時に現れたのがこの黒電話、それにAstral Groundも動かせなくなって……  「…………あれ!?」  そこで開いているページの変化に気付いた、『世界の歴史』が消えていたのだ。  すぐさま他の『世界の歴史』が書かれていたページをめくってみる。  どのページも最初にAstral Groundを開いた時と同じように白紙の状態に戻っていた。  そして表紙の次、つまり先頭のページにまでたどり着いた時にやっとそれを見つけた。  けれど『世界の歴史』の下に書かれた文章を見て驚きを隠せなかった。  『世界の歴史』  神は空白を望み、そして世界はゼロになった。  悪寒を感じ全身に鳥肌が立つ、恐らくこれの表紙は……  本を閉じると表紙のタイトルにはAstral GroundではなくNatureと書かれていた。  
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