第0章 2節 次に歴史を築こう

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 目尻が乾いて持っていたハンカチで鼻をかんで本棚に背中を預け頭の中を整理する。  現在いるこの場所には人がおらず、あるのは本棚にある大量の本とそこの机一式。  本棚の間をひたすら進み続けるとその対角にある本棚の間から出てくる(他も同様)。    そして天井と思しき場所から出る光は太陽ではない。  何らかの発光体のようで今いる机一式が置かれたこの場所のみを照らしている。  (………こんなところか)  集めた情報を考慮して結論を出すと、この場所は一体何なんだ?  となるのでまだ結論を出せるほど情報が集まっていないことから結論は保留とする。  それでも今の情報量でも矛盾点ぐらいは絞り出せる。  注目したいのは「人がいない」という点と「机一式」についてだ。  この机一式は明らかにお手製、しかも手先が器用ではない誰かの。  ……まあやすりがなくてこのような粗っぽい状態になっているのは含めない。  この段階でここに人が「いた」ということは確認できる。  けれどまだ不可解な点がある、机の材料となるモノの存在である。  木製の、それも大人一人がきちんと座れる程度の大きさの椅子を作るとなると、  どうしてもスペースと用具、それに後片付けが必要になる。  今いるこのスペースは大きく見積もっても6畳半ぐらいの広さしかない。  作業するには少し狭く感じられる、これなら外に出て作った方がマシだ。  (……出口ないから外には出られないけどね)  と自分に毒づきながらこの問題の結論をまとめる。  この机は運び込まれた、そしてそのまま放置されている、という結論になった。  ……………だが、まだどうにも気になる点があった。  妙に綺麗なのだ、どこもかしこも。  例え人が生活していないくても時間が経てばモノの上部には埃がたまる。  それなのに机の上はささくれなどの不細工さを考えなければ埃が溜まっていない。  しかもここの地面は立ったまま私自身の顔の輪郭を確認できるぐらいピカピカなのだ。  試しに地面をつうーっと人さし指で一直線に擦る。  ワックスだったりクレンザーか何かで綺麗にしたと思ったのだ。  触ってみて粉っぽい感じも油っぽい感じもしない事で驚いた。  (この地面………初めから誰にも使われていないような……)  とりあえず結論候補の中に「人類が生活していた場所ではない」が追加された。
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