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どうやら、彼女に謎かけをされているらしい。だけど、俺はそれが何かわからない。しばらく待っても答えられない俺に古谷さんは焦れたのか、ニヤニヤを引っ込めて真顔になると、パッと日誌を差し出した。
「友達とクリパするけど、藤田くんも来る?」
「え?」
「男とか、女とか、そういうのこだわっちゃう人でなければ、仲間に入れてあげてもいいよって言ってるの! 友達とやるクリスマスパーティーに!」
「……や、やったー! いいの?」
「いいよ。別に男子禁制ってわけじゃないし」
じわじわと、ようやく理解が追いついて、同時に嬉しさがこみ上げてきた。何となく、求めていた結果とは違うけれど、おかしそうに笑ってこちらを見る古谷さんに、それでもいいかと思えてくる。
「じゃあ、日誌と鍵、よろしくね」
「あ、うん」
そう言うと、古谷さんはガラリと戸を開けて、廊下へと駆け出して行った。ほとんどシルエットになった姿で、一瞬こちらを振り返って小さく手を振って、そのまま、金色の外側へと駆けて行った。
ひとり残された俺は、日誌を開いてそこに書かれた古谷さんの文字をそっと指でなぞって、彼女の笑顔とさっきの素敵なお誘いの言葉を思い出して噛みしめた。
そうすると、この夕暮れの光と同じくらいとろりとした感覚が胸の中に広がっていった。
とろりとした金色。
その中に、俺は今、包まれている。
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