第3章 牢屋

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「そういえば、今更だけどあの女ってあの牢屋に繋げてて良いのか?」 「それは俺の母親であるアイツを繋げておいて良いのかってこと?それとも、『組織の裏切り者』をいれる牢屋に置いといて良いかってこと?」 「もちろん後者に決まってんだろ。さっきの女にお前が何をされてたか、昔お前から聞いたからな。前者はありえねーよ」  女ーーカラシナの『母親』を捕らえている牢屋から離れた2人は、元来た廊下を引き返している。  そもそも、先程まで2人がいた牢獄内に閉じ込められている人々は、カラシナらが属する組織を裏切った者や逃げ出そうとした者などがほとんどだ。  だが例外もいる。その1人がカラシナの『母親』だった。 「それはどうも」  申し訳程度に頭を下げたカラシナの様子に苦笑しながら、ライデントは不意に提案した。 「ところで、カラシナは今から用事とかあるのか?もし無いなら、今から少しだけ呑みに行こうぜ」 「馬鹿じゃねーの」  即答だった。それでもライデントは諦めない。 「つれないなぁ。たまには息抜きも必要なんだぞ?それに、話したいことや聞きたいこともあるんだよ」 「いや、俺明日も仕事だからね?それに時間考えろよ。もうすぐ(夜中の)1時だぞ」 「南区の酒場なら朝まで開いてるから大丈夫だって。それに、執事の仕事なら仕事中の暇な時に昼寝でもすればいいじゃねーか」 「そういう問題じゃないから」  それでもなおしつこいライデントに、カラシナはとうとう観念してしまったらしい。 「ーーああもう、めんどくせーな。行けば良いんだろ。分かったからその捨てられた子犬みたいな目で俺を見るな」 「本当に!?カラシナ、良いのか!?やったぜ!!じゃあ、店は俺いちばんオススメの所で良いよな?」  まるでおもちゃを買ってもらった子供のように、ライデントはその瞳を輝かせている。  そんな様子を、カラシナは表情ひとつ変えず見守る。  彼の口の端が少しだけ、ほんの僅かに吊り上がったことに気付く者は、この場においてカラシナ含む誰一人いなかった。
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