第3章 牢屋

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 女への暴力が中断した時は、既に日付けが変わっていた。 「ーーおい、カラシナ。その辺にしとけ。さすがに死ぬぞ」 「・・・・・・・・・・・・」 「もう声すら上げない奴を虐めてどうする?もう気絶してるみたいだし、多分もう何しても反応しないぞ?」 「気絶はしてねーよ」  黙り込んだままひたすら殴り続けていたカラシナが、いつの間にか近くに来ていたライデントの言葉に口を開いた。同時にその手も止まる。  心なしか殴られ続けていた女の体には、痣だけでなく切り傷も増えていた。 「そーですか。でもさ、カラシナだって疲れただろ?息も上がってるし」 「うるせー。平気だっての」  カラシナはそう答えるが、微かに肩で息をしているのが分かる。 「でもお前、魔法を使えない分物理的なダメージを与えるしかないだろ。体力の消耗は激しいはずだ」 「ライデント・・・・・・」  ライデントの諭すようなセリフに、カラシナも押し黙った。  突然だが、ここで魔法について軽く触れておく。  この世界に存在する魔法は、大きく分けて2種類。炎や水、風などを操る『通常魔法』と、通常魔法に属さない『特殊魔法』だ。 『特殊魔法』は更に2つに分けられる。1つは回復魔法。『白魔法』とも呼ぶ。  そして2つ目が『黒魔法』。通常魔法にも白魔法にも属さない魔法だ。  ちなみに、ドアを壁に見せていた魔法やそれを解いたライデントの魔法も『黒魔法』に分類される。 「・・・・・・そうだな。今日はやめておく。魔法を使えない俺に出来ることは限られているからな」  どこか自嘲気味に答えるカラシナに、ライデントはそのキリッとした目を伏せた。 「悪い。言い過ぎた」 「別に良いから。本当の事だし謝んな」  それでも申し訳なさそうに顔を逸らし続けるライデントに、カラシナは一瞬迷った後、黙ってライデントの肩に手を乗せた。  個人差こそあれども世界の9割が少しでも魔法を使えるのだが、カラシナは残りの1割。  つまり、世界でも珍しい“魔法を一切発動できない人間”だ。  もっと言うなら、カラシナがいるこの組織内では、魔法を使えない奴などカラシナ以外には誰一人いない。  それでもカラシナは組織内でも強い方で、組織の人間たちから慕われているほどだ。  その理由については、またの機会に。
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