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「男?それは例えば、この城にいる他の従者とかその類いですか?」
「いいえ。どちらかといえば、城の客人に近いかしら」
プルメリア曰く、その男は週に2,3度ほど城にやって来ては国王らと何かを話し、そのついでにプルメリアの部屋へもやって来てプルメリアの話し相手になっているらしい。
「でもカラシナ、それがどうかしたの?」
「いえ、別になんでもありません。ただ、何となく気になったので」
「へえ。貴方も他人に興味を持つのね。まったく興味を持たなさそうにしか見えないけれど」
目を丸くしながらプルメリアが呟くように言った。
「そうは言っても、やはり読書がいちばんーー」
「ーー失礼します。お昼の食事をお持ちしました、プルメリア王女」
プルメリアの言葉を遮った扉の軽いノック音と共に、若い女性を思わせる高い声が2人の耳に届いた。
その言葉を聞いたカラシナは、懐から懐中時計を取り出して時刻を確認する。
「うわ、もうこんな時間だったのか。昼飯時じゃねーか。そういえば腹も減ったし・・・・・・、・・・・・・プルメリア様?」
ここでカラシナはプルメリアの様子がどこかおかしいことに気付いた。
「かっ、カラシナ!?何かしら?」
「どうかしましたか?もしプルメリア様が宜しければ、俺が受け取っても良いですけど」
「ーープルメリア様?いらっしゃらないのですか?お食事ですよ」
「ほら、急かされてるし。な?もう俺が行きますよ?」
プルメリアの返事を待たず、カラシナは扉の方へ向かう。
人1人が通れるくらい扉を開いたカラシナは、その隙間から顔を外へのぞき込ませた。
そこにいたのは、まだ20代半ばほどと思われる2人の若い女性。
「あっ、プルメリア王女!!いらしたのですね。お食事をーーきゃあっ!?だっ、誰ですか!・・・・・・子供?」
そのうち、真っ直ぐ伸びたダークブラウンの髪を持つ女性が、警戒心を露わにしながら尋ねた。
対するカラシナは、『子供』という単語に少し体を強ばらせたものの、すぐに答えた。
「あ、ああ、初めまして。昨日からプルメリア様の専属従者となりました、カラシナと申します。以後お見知りおきを」
カラシナは左手を背中に回し、右手をお腹の辺りに持ってきて、滑らかな動作で軽くお辞儀をした。
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