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「分かりましたから、顔を上げて下さいまし。ささ、早くお立ちになって?」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
右の女性のゆったりとした優しげな口調に従い、カラシナは立ち上がって顔を上げる。
直後、2人の顔を見たカラシナが表情を変えぬまま息を呑んだ。
二人はどこか憐れむような視線をカラシナへ注いでいたのだ。
「では改めまして。グロリオサ王国が第一王女、スイレーン・グロリアスと申します。そして私の隣に立つ彼女が、」
「第二王女、デイジー・グロリアスですわ。以後お見知り置きを」
右に立つ女性ーースイレーンの言葉をデイジーが引き継ぎ、ほぼ同時に2人は優雅にお辞儀をした。
改めて見ると、2人は絶世の美女と呼ぶに相応しい顔つきだ。しかも、姉妹だと知った人々のほとんどが納得するであろうほどには似通っている。
背の高さもほとんど変わらずスタイルも抜群。端正な顔立ち、スラリと伸びた色白の手足、程よい胸の膨らみなどは誰しもが目を惹き付けられる。
強いて分かりやすい違いを上げるなら目元だろうか。
デイジーはやや吊り目であるのに対し、スイレーン は鋭利だが優しげな目を持っている。それでも、やはり翠緑玉をはめ込んだような美しい瞳は重なる部分があった。
「それでは、改めてよろしくお願い致しますね、カラシナ」
「私たちとは会う機会が少ないかもしれないけれど、気さくに話しかけてくださいな!!」
どうやら2人は雰囲気が反対らしい。
怜悧で落ち着いたスイレーンが控えめに微笑み、反対に友好的な明るいデイジーが両手を合わせて胸にあてながら笑顔を浮かべた。
「ありがたきお言葉。噂に違わずお美しい御二方がそのように仰ってくださるとは光栄です」
(白々しい笑顔浮かべやがって。完全に見下されてるな、俺も)
カラシナはそう答えつつ、内心毒ついていた。
「御二人とも、とても似ていらっしゃいますね」
「よく言われますのよ!私は似てないと思っているのですけれどね」
ふふっ、とデイジーが照れたように笑った。その様子はプルメリアに似ているようにも見える。
が、カラシナは何となくそこに触れるのを避けた。そこに意図はなく、本当にただの気まぐれだ。
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