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「似ているというのは、お姉様同士の話よね?それも顔の」
「ええ。他には特に何も。世間一般で言われる『美女』という言葉を具現化したような方だな、と思ったくらいでしょうか。性格はともかく、顔はね」
「『世間一般では』?カラシナは美しいと思わないの?」
カラシナのどこか引っかかる言い回しを、プルメリアは聞き逃さなかった。
「思わないですね」
「な────」
当たり前であるかのようにサラリと言い放ったカラシナを、プルメリアは丸い瞳を更に丸くしながら見つめている。
「あ、もしプルメリア様の気分を害してしまったら申し訳ありません。ですが、少なくとも俺の好みじゃないですね」
「い、いえ。初めてだわ、お姉様方をそう貴方のように言った人は」
当然だ。ただでさえ絶世の美女である上に、身分関係もある。なんせ、相手は一国の将来を担うはずの王女なのだから。
だが、カラシナは淡々と言い切った。それも、第3王女であるプルメリアの目前で。
プルメリアが仮に国王へ告げ口すれば、妻と娘を溺愛していることで有名な彼のことだ、間違いなくただの死刑では済まないだろう。にも関わらず。
「カラシナ、今貴方が言った言葉は大した事じゃないかもしれないけれど、1歩間違えたら命は無いわよ?例えば私が裏でお父様に伝えたら。考えなかったの?」
「考えませんでしたね」
カラシナは当然のように言った。
「だって、プルメリア様はそんな事しないでしょう?」
それは、短い期間で芽生え始めた信頼からか、それともそう確信させる証拠でもあったのか。
「・・・・・・何故、言いきれるのかしら?」
訝しげに眉を顰めながらプルメリアが尋ねた。
「だって、プルメリア様はお嫌いでしょう?スイレーン様もデイジー様も、国王も、女王陛下も」
突如、開けたままになっていた窓から強風が入り込み、白いレースのカーテンを強く揺らした。
プルメリアは眼を見開いたまま硬直している。
「・・・・・・なんで?いつ、分かったの?」
プルメリアは蚊の鳴くような震える声で、カラシナを試すかのように聞く。
「何でって、廊下でのプルメリア様の様子を見れば何となく勘づきますよ。理由までは知りませんが、仲悪そうだなくらいは」
「・・・・・・そう」
それだけ言うと、プルメリアはゆっくり窓へ向かった。開け放たれた窓をそっと閉めると、レースカーテンのみ丁寧に閉めて振り返った。
「・・・・・・少し、教えてあげる。お姉様方と私がお互いを嫌っている理由を」
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