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第31.5章 それぞれの闇
「さて、お2人とも。まずはダリア姉様に関して詳しく教えて頂きましょうか」
暗闇が世界を包む頃、《静寂と混沌》地下牢にて、両手を特殊な手錠で繋がれたリステとユダを相手にリンドウは尋問している。
同盟組織による襲撃は、呆気なく終止符を打たれた。理由は大きく2つ。
1つは同盟組織が《静寂と混沌》を甘く見すぎていたこと。各々の組織は幹部クラスを投入したといえまだ人数も強さも足りなかった。
「戦いを仕掛ける時は少なくとも相手の3倍は戦力を準備するのが定石だというのに足りていない。本気で潰す気など鼻から無かったか、あるいは組織内の上級魔導士を準備すれば勝てると思ったか・・・・・・もし後者ならば侮りすぎだ」
と、インテアスは鼻で笑っていた。
もう1つは、決して広いとは言い難い貧民街を襲っていた人間たちは、どれも下級だったこと。《静寂と混沌》の人間とっては雑魚同然だったため、貧民街の争いを止めるのはそれほど難しくなかったらしい。
中にはリステやユダのような実力者もいたらしいが、彼らは圧倒的に戦闘の経験が浅かった。くぐり抜けてきた修羅場の数もレベルも違いすぎたのだ。
戦いを終え組織に戻ったリンドウは、チーフに呼ばれたカラシナの2人と別れ、先に戻っていたインテアスが連れてきたリステとユダを捕らえる地下牢へと足を運んでいるわけである。
「ダリア姉様が政略結婚に利用された。そう、ユダ兄様は仰いましたよね?」
「『された』か、そうだな。ペール父様が亡くなられてから、五等貴族にまで堕ち没落の危機を迎えたラティフォリア家が何とか持ちこたえていられるのは、ダリアが相手の3等貴族と結婚したお陰だ。向こうでも気に入られているらしい」
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