働く女子の憂鬱と不思議な黒猫

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「よしっ」 このあと使うプレゼン用の資料を印刷して、人数分の部数ごとにまとめる。 最後に資料を揃えてプリンターの前を離れようとしたときだった。 ドンッ! 「あ、す、すみません」 突如身体(からだ)に感じた衝撃に、誰かにぶつかったんだということに気づいて、相手を確認する前に頭を下げた。 「石橋(いしばし)さん、気をつけてちょうだい。あなたがぼんやりしてるからいけないのよ」 耳に届いた声にゲッとなる。 この声が、うちの課長のものだったからだ。 「しかもそれ、今日の15時からのプレゼン用の資料じゃない? そうやってぼんやりしてるから、直前になって急いで印刷する羽目になるのでしょう?」 「それは……」 本当は、朝一に印刷をかけるつもりだった。 だけどいざ印刷をかけようとしたところで、資料内にミスがあることに気がついて、ギリギリになってしまったのだ。 課長がそんな私の言い訳を聞いてくれるわけがなく。 「ぼんやりしてるから時間がなくなる。時間がなくなるから焦る。焦るとミスが出る。いつも私、言ってるわよね?」 「はい、すみません……」 どういうわけか、いつもに増して課長の機嫌が悪い。     
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