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「そんなに気を落とさないでください。あの時、僕見てましたけど、イライラしながらオフィスに戻ってきた課長も悪いですって。石橋先輩があんな風に責められるのは理不尽です」
「……そう。って何で伊勢くんがいるの!?」
話を聞いてくれていた隣の席に座っているはずの真奈子ではなく、軽い口調の後輩男子の声が聞こえてきて思わず目を見張る。
すると、ちゃっかりとカウンター席の真奈子の隣から、こちらに向かってVサインを作る、この春に新入社員として入ってきた伊勢くんの姿があった。
「いーじゃないですか! 偶然この店にフラりと寄ったら先輩たちが居て、さりげなーく隣に来させてもらったんです」
その口調は、まるで星や音符でも飛んでいるかのように楽しそうだ。
こっちは全然楽しくないっての。
真奈子も今、初めて隣に伊勢くんが座っていることに気がついたようで、驚いたように目を瞬かせている。
「戸田先輩、隣良いですか?」
「どうぞ」
って、どうぞ、じゃない!
真奈子から正式な許可がおりて、私たちの中に入ってくる伊勢くん。
「いいじゃない、美紅。そんな顔しなくても」
したくもなるって。
というのも、私はこの新人の伊勢くんが苦手だ。
いつも私が弱っている時にひょっこり現れては、こちらの気も知らずにヘラヘラと話しかけてくるのだ。
伊勢くんはすごく仕事のできる期待の新人。
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