働く女子の憂鬱と不思議な黒猫

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それでもって、人当たりが良くて顔も平均以上の伊勢くんには、気分屋の課長もいい顔をしていることが多い。 「課長の怒りの矛先から回避するために、石橋先輩はもう少しきびきび動いた方がいいかもしれないですけどね。まぁ、そののんびりしてるところが、僕は好きなんですけど」 また私のこと、バカにして……。 そんなデキる伊勢くんに、私の気持ちがわかるわけがない。 「もう、伊勢くんったらぁ! でも私もそう思う。きびきび動ける美紅とか、美紅じゃないし」 目の前で盛り上がっていく二人に反発することさえ、もはや面倒だ。 「……次はジントニックお願いします」 私は日頃の鬱憤を晴らすように、今日はしっかりと飲むことに決めた。 * 「石橋先輩、大丈夫ですか?」 「大丈夫だって~」 覚束ない足取り。宙をまわる世界。 隣で二人が話している間にちょっとお酒を飲み過ぎてしまったようだ。 「美紅、絶対大丈夫じゃないでしょ! 伊勢くんに送ってもらいなよ」 「いいって! 二人して、私をからかって盛り上がっていたくせに!」 「美紅っ!」 私は真奈子が引き留める声すら無視して、二人をおいてその場を後にした。 ネオン街の明るさのせいで夜空に星は見えない。 この華やかな街並みの中、私はきっとくたびれた女子OLに見えるのだろう。 「あー、もうやだぁ」     
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