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とりあえず目の前の街灯の隣にカーブミラーが立っていたため、ちょうど自分が映る位置まで移動する。
ところがどう動いても、私自身は映らない。
鏡に映るのは、私が記憶をなくす前に見た黒猫のみだった。
少しして、はっと気づく。
まさか……。
確かにあの黒猫に私とかわってよ、とは言ったけれど……。
目が覚めたら、そこには黒猫になった私がいたなんて、誰が信じるだろう?
でもそのまさかのようで、今の状況を他の言葉ではとても説明できない。
仮に私が昨夜の黒猫と入れかわっているのだとして、そうしたら私のカラダはどうなったのだろう?
まさか、私のカラダの中にはあの黒猫が入っているの?
…………。
まぁいいか。とりあえず望み通りあの黒猫になれたのなら、まず寝よう。まだ眠たいし。
ゴミ捨て場は嫌だから、どこか別のところがいいな。
*
バシンっ!
「ニャーー!」
鋭い衝撃で目が覚めると、辺りは明るくなっていた。
悲鳴の変わりに、口から出た猫の鳴き声に、自分が黒猫になってしまっていることを思い出す。
……夢じゃ、なかったんだ。
あれから真夜中の街中を歩き回って、ようやくベンチの上で新聞紙にくるまって眠った。
だけど、目の前には……。
「出ていけ! 野良猫め!」
「ニャッ!」
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