働く女子の憂鬱と不思議な黒猫

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振りかざされる(ほうき)に身を翻す。 石橋美紅にはこんな身体能力はないけれど、今は黒猫の姿だから成し得る技だと感じた。 再び箒で打ちのめされる前に、私は細い木の隙間に逃げ込んだ。 「あの野良猫、ゴミまで持ってきやがって……」 木の隙間から、私がさっきまでくるまっていた新聞紙をピラピラと持った男性が箒を片手に去っていくのが見える。 どうやら私がさっきまで寝ていた場所は、人様のお家の広いお庭にあるベンチの上だったようだ。 夜は暗かったし、早くのんびり寝たかったから、そこまで気に留めてなかった。 危ない危ない。 それにしても、お腹空いたな。 明るくなり辺りを見回しても、イマイチこの場所がピンと来ない。 視界が低くなってしまったからだろうか。 じっとしていても仕方ないので、私は少し歩いてみることにした。 完全週休二日制の私の会社は、固定の休日である日曜・祝日以外は、希望を出した日が休日になる。 今日は貴重な平日休みとはいえ、特別な予定があったわけではなかった。 だけど黒猫になってしまった今、今日が休みで良かったと思う。 歩いているうちに会社の近くの道に出ていたようで、見慣れたコンビニが見えてくる。     
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