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やった! と思ったのも束の間。私がコンビニに近づいたところで、外に幟を立てていた男性にシッシッと嫌な顔をされて、自分は今黒猫だったのだと再度気づかされる。
さすがにこの姿では何も買えない……。
よく猫がいると、みんな可愛いと黄色い声を上げては餌をあげたり、体を撫でたりしているイメージがあるが、忙しなく出入りするサラリーマンたちにはそんな余裕もないのか、全くと言っていいほど私の存在に気づきすらしない。
挙げ句の果てには、近くを通りかかった小学生には石を投げられる始末だ。
お腹は空いた上に喉も乾いた。
だけど、食べ物どころか水一滴さえありつけない。
猫は決して楽なんかじゃなかった。呑気だなんて言ってごめんよ……。
心の中で昨夜の黒猫に謝ってみるも、状況は変わらない。
イタズラを仕掛けてきた小学生も去り、この隙にコンビニから立ち去ろうとした時。
私の目の前に、二本の人間の足が立ちはだかった。
危うくぶつかりそうになったところを寸前で止まる。
目の前に見える黒のパンプスに、少し視線を上げた先に見えるベージュのスカートを見る限り、女性のようだ。
課長だ。見るからにイライラしているのがわかる。
さすがに黒猫になっても課長に理不尽に怒られるなんて嫌だ……!
私は課長を避けて道路へと出ようと思ったが。
「チッチッチッチ」
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