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相変わらずの闇の中を歩くと、
少し先に光が見えた。
出口かもしれない、そう思ったけれどそれにしては小さいような気がした。
とりあえずその光を目指して僕は歩く。
あんまりにも長い間暗闇ばかりを歩いていたから、そう遠くないそれにも目がチカチカとして響くように痛かった。
思いの外遠いその光は、
近づくにつれ徐々に輪郭を顕にした。
人だった。
僕とそう年の離れていない少女だった。
眩しすぎるがゆえ細かい造形は分からないけれど、とても美しい人だと分かった。
なんでかは自分でも分からない。
彼女の方も僕に気付いたようだ。
こちらを向いたことが、光の揺れ方で何となく察せられる。
あの、と言ったつもりだったけど
しばらく言葉を発していなかったから
声が上手いこと出なかった。
「どうして泣いてるの?」
小さく、でもはっきりと通る声で彼女はそう言った。そうか、彼女自身光ってるから僕の顔はよく見えるのか。なんだか卑怯だ。いやそんなことはどうでもいいけれど。
「眩しいから、目に染みたのかも」
適当だった。
正直自分でもなんで泣いているか意味がわからないし、言われて初めて自覚したぐらいだ。
「面白いことを言うのね」
くすくすと笑う。未だに僕はしっかり表情まで認識出来ていない。驚くほどに光が強いので、目が慣れところで見えるような気もしない。
なんだか人に会ったことで僕は妙に落ち着いていた。そのせいか、僕は自然とまぶたを下ろした。
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