[第一章]七月九日 死神?

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「……私、まだ恋もしてないのに」 「……うん」 「ねぇ、恋するってどんな感じなの? ドキドキとか、ワクワクとか、そういうの経験してみたかった。もう私には(えん)のない話だけど…………」 「俺の経験上」 「うん」 「恋をするってのはさ、相手を思いやったり、この人を大切にしたいって思う瞬間なんだと思う」 「なんか、大人ぁ」 「そっ、大人ですから。さらに言えば、キスしたいって体が勝手に反応したときかな」 「えっ……」  思わず赤面。  知らなくていい世界があるのかも……。 「自分にはもう縁のない話だって言ってたけど、そうでもないぜ」 「え?」 「お化けになったって感情はあるんだし、これからそういった相手見つけりゃいいじゃん。なんなら、俺が────」 「夢だったらいいのに。今までのこと、全部…………!」 「…………そう、だね……。ホント……」  彼は小さく笑う。
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