追憶

2/5
前へ
/29ページ
次へ
2度目に受験したのは今の東京都八王子市にある帝京大学だったっけ? でもさ、此処の問題、国語、社会、英語もろともめっちゃ簡単だったんだけど、答案用紙に答えを書こうとした時に馬鹿デカいスズメバチが答案用紙のど真ん中に止ま ってしまって………。 こう見えて僕、生まれつきからの内気でさ、周囲の人間の前で手を挙げて、試験官に何か一言すら伝える勇気も無くて、殆ど何も書けなかった。 よりによって、どうして試験時間になる度に答案用紙にスズメバチが悪戯をしに来るのだろう?しかも、二度も三度も。結局、この大学の受験も失敗に終わるのか。試験終わりの帰路が余りにも遠く感じられた。 僕の生まれ故郷は四国にある徳島県徳島市内なのだけれど、別に僕は生まれて来たくて生まれた訳じゃないし、僕って何故だか不幸な星の下に生まれて来てしまった様に思えて、思わず希死念慮に取り付かれてしまってさ。………いっそこのまま故郷に戻らずに死んでしまおうかな? JR中央線の八王子駅から電車に乗り、東京駅へ向かう途中に「高円寺」と言う駅があるのだけれど、高円寺の町って徳島の町で有名な阿波踊りが盛んな町らしいね?ちょうど良いや、その駅で死んでみようかなぁ。 別に僕は徳島の町が嫌いだと思っている訳じゃないのだけれど、 僕と言う人間が存在している事に 屈辱を感じていると言うか何と言うか、 最初から僕なんて存在していなければ良かったんだと言う想いで………。 気が付くと、僕は高円寺の駅のホームで佇んでいた。 ………最初から、………僕なんか、………生まれて来なかった事にしたい。 その日は年の瀬が迫る12月20日。 今となっては忘れもしない、僕と言う器が この世に生まれた日。 そう言えば、もう少し時が過ぎればクリスマスだっけ? でも、どうしてクリスマスってあるのだろう? かつて、今のイスラエルと呼ばれる国のエルサレムの町に1つの生命が誕生した。 その名はイエス。 この国の歴史も同様なのかも知れないけれど、当時、イスラエルと言う国で暮らしていた人間には「姓」と呼ばれるモノが無かったらしい。 イエスはヨセフと言う名の養父を持ち、ナザレと言う町で暮らしていた為、 周囲の人間からは「ヨセフの息子」「ナザレのイエス」等と呼ばれていたと言う。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加