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とにかく、彼は自分と言う名に存在意義を見出だしたかったに過ぎない。そこで彼は自分が存在している理由を探して旅を始めたのだろう。
それが今日に至るキリスト教の教義の確立へと繋がり、その栄誉を称えられ、今でもクリスマスとして残されているのかも知れないけれど、それはおめでたい話なのかも知れないけれど、一部の宗教かぶれの人間はこう叫んでいるらしい。
「キリスト様がワタクシ達の罪を背負われて天に召されましたから、ワタクシ達には何をしても罪は無いのです。」
その様な妄想を掻き立てる事で皆が幸せになれるのなら良いのだけれど、僕にとっては関係の無い話かな?それに、僕にはクリスマスを一緒に祝う友達も恋人もいない。
そればかりか、例え僕が死んでしまっても、僕の事を哀しむ人間は誰1人として存在していないと言っても過言じゃ無い。
………この日を僕の命日としよう。
電車は刻一刻とホームへと近付いて来た。
………僕には最早、………死の恐怖さえ感じられはしなかった。
段々と朦朧となる意識の中で、僕の器はホームの中へと消え掛かろうとしていた。
その時だった。不意に僕は後ろ手で何者かに手首を掴まれ、思わず我に返った。
「………大丈夫ですか?」
気が付くと、僕の後ろに1人の女子高生らしい少女が立っていた。 彼女は心配そうな眼差しで僕に話し掛けて来た。
「………何だか疲れ果てている様に思えましたけど、どうかされたんですか?」
「どうもしませんよ。大丈夫です。気を使って頂いて有り難うございました………。」
……… 僕はそう言って、 そそくさとその少女から離れるかの様に、その場を跡にした。
こんな時、僕はその少女に対して、何て答えれば良かったのだろう?
僕は時々、分からなくなる事がある………。
………僕って一体、何者なのだろう?
………どうして存在しているのだろう?
存在する必要がなければ存在している筈も無いと言うのに、確かに僕は僕の意識を感じる事が出来るのだけれども、その根拠すらも未だに理解する事も出来てはいない。
でも、そんな想いを僕は今迄に誰かに伝える事は出来てたのかな?
今一度、君に問いかけるのだけれども、もし君が本当に死んでしまいたいと感じた時、誰かに想いを打ち明けられるのかな?
そこのアナタはどうかしら?
ひょっとして、僕は自閉症を抱えているのかも知れない。
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