光明往くが如し

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「すみません。ワタクシは近頃になって目を悪くしてしまってね。殆ど景色は見えていないのですよ。恐れ入りますが、もし宜しければ、ワタクシに横断歩道を渡らせて頂けないでしょうか?」 僕は大松に答えた。 「はい。構いませんよ。どうか僕の腕にお捕まり下さい。」 そして、僕達二人は横断歩道を渡り始めた。暫しの沈黙の後、大松は話し始めた。 「ワタクシは自らの視力を失いましたが、この世には人としての心を失った人間がいる様に思えてなりませんね。せめて、アナタの様な方に出会えた事を神に感謝致します。」 僕は大松に尋ねた。 「この世に神は存在しているのでしょうか?」 大松は答えた。 「ワタクシ達が出会ったのも、神の導きなのではないのですか?………アナタの神とワタクシの神が出会ったからこそ、ワタクシ達の今が存在しているのだと思います。」 ………何故だろう? この大松利雄と名乗る人物からは、ただならぬ気配を感じてしまう。 この世の全てを見通しておられると言うか、悟りの境地に達しておられると言うか何と言うか、まるで那由多の世界から来訪された人物であるかの様に、僕にはそう感じられた。 「此方までお連れして頂ければもう大丈夫です。しかし、郵便局の前まで御一緒して頂けるとは、アナタの様な存在を天使と呼ぶに相応しいのかも知れないですね?」 ………大松氏の言葉で僕は我に返った。彼は僕に尋ねて来た。 「ところで、アナタは何故にこの町にいらしたのですか?」 僕は答えた。 「人の世の旅をしている途中に偶然立ち寄っただけですよ。特に理由はありません。」 大松氏が僕に話した。
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